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特別受益と寄与分
生前贈与・介護の貢献を遺産分割に反映させる仕組み

「自分だけ少ない」「介護したのに同じ取り分」——こうした不公平感を是正するために民法が定めた2つの制度が特別受益寄与分です。どちらも遺産分割協議の前に主張・合意しておく必要があります。

⚖️ 特別受益とは
相続人が被相続人から生前贈与・遺贈などで受けた利益のこと。他の相続人との公平を保つため、受け取った額を相続分から差し引く(持ち戻す)制度です。
🤝 寄与分とは
相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に、その貢献分を相続分に上乗せできる制度。介護・家業への貢献などが対象です。

特別受益 — 対象になるもの・ならないもの
特別受益に該当
住宅購入資金の贈与(「家を建ててあげた」)、留学・進学のための多額の教育費、事業開業資金の援助、結婚持参金(支度金)の贈与、遺言による遺贈
原則として該当しない
通常の生活費・食費の援助、一般的な学費(義務教育・高校程度)、少額のお小遣い・お年玉、日常的な医療費の負担
特別受益の「持ち戻し計算」の仕組み
みなし相続財産 = 遺産総額 + 特別受益額
【例】遺産3,000万円、相続人は子A・B・Cの3人。AだけがかつてBから住宅資金600万円を贈与されていた場合:
みなし相続財産 = 3,000万円 + 600万円 = 3,600万円
各自の法定相続分 = 3,600万円 ÷ 3 = 1,200万円
A の取り分 = 1,200万円 − 600万円(特別受益)= 600万円
B・Cの取り分 = 各1,200万円
※ 被相続人が「持ち戻し免除」の意思表示をしていれば計算不要

寄与分 — 認められるケースと計算
療養看護型
被相続人が要介護状態で、専業で介護にあたった。ヘルパー費用に相当する金額が寄与分の目安となる(日額×介護日数×裁量割合)。
家業従事型
被相続人の農業・商店・会社に無償または低報酬で長年従事し、財産の維持・増加に貢献した。給与相当額との差額が寄与分の根拠になる。
財産給付型
被相続人の借金返済・事業資金を肩代わりするなど、財産を直接提供した。贈与でなく「贈与以外の財産上の給付」として評価される。
寄与分の計算例(療養看護型)
寄与分 = 介護日額(ヘルパー相当)× 介護日数 × 裁量割合
【例】介護日額8,000円 × 3年(1,095日)× 0.7(裁量) ≒ 約614万円
ただし「特別の貢献」が必要で、通常の親族間扶養の範囲は対象外。弁護士による評価・交渉が現実的です。

主張・解決の手順
1
遺産分割協議で主張する
相続人全員で行う協議の中で、特別受益・寄与分を主張します。全員が合意すれば協議書に反映して解決です。
2
合意できなければ家庭裁判所で調停
協議がまとまらない場合は遺産分割調停を申立て、調停委員を交えて解決を図ります。
3
調停不成立なら審判へ
調停が不成立の場合は自動的に遺産分割審判に移行し、裁判官が寄与分・特別受益額を判断します。
4
弁護士への早期相談が重要
証拠(介護記録・通帳・贈与の書類)は早めに収集を。弁護士への相談タイミングを見極め、時効・証拠消滅前に動いてください。

よくある疑問
特別受益の「持ち戻し免除」とは何ですか?
被相続人が「この贈与は相続分に含めなくてよい」と意思表示(遺言など)した場合、持ち戻し計算が不要になります。2019年の民法改正により、婚姻20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与・遺贈については、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されるようになりました。
介護をしたのが相続人の配偶者(嫁・婿)でも寄与分は主張できますか?
原則として寄与分は「相続人」だけに認められ、相続人の配偶者(嫁・婿)は対象外でした。ただし2019年の民法改正で「特別の寄与」の制度が新設され、相続人でない親族(嫁・婿等)も被相続人に療養看護などの貢献をした場合、相続人に金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。
10年以上前の贈与も特別受益になりますか?
特別受益に時効はなく、何十年前の贈与でも原則として対象になります。ただし「遺産の前渡し」の趣旨で行われた贈与かどうかが争点になります。被相続人が「持ち戻し免除」の意思を示していた場合や、通常の扶養の範囲と認められる場合は対象外となることもあります。
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