トラブル対策 > 財産の使い込み対策

特定の相続人が財産を使い込んでいた場合の対処法
証拠収集・不当利得返還請求・遺産分割調停での対応

被相続人の生前に同居の相続人が預金を無断で引き出していた・死後に遺産を勝手に処分したというケースは相続トラブルの中で最も多い類型の一つです。証拠収集と時効に注意しながら法的手段を選択することが重要です。

使い込みの疑いを確認する
生前の使い込みの疑い
被相続人の通帳に大きな出金・ATM引き出しが多数ある(特に晩年)高リスク
同居の相続人が被相続人の通帳・印鑑・キャッシュカードを管理していた高リスク
被相続人が認知症・入院中・要介護状態だった期間に多額の出金がある高リスク
遺産が生前の収入・資産規模と比べて大幅に少ない中リスク
相続後の使い込みの疑い
被相続人の死後、一部の相続人が金融機関の窓口で預金を引き出した高リスク
遺産分割協議前に不動産を無断で売却・処分した形跡がある高リスク
相続人の一人が通帳・重要書類を隠して開示しない中リスク
遺産の内容について「知らない」「ない」という不自然な説明がある中リスク
項目にチェックを入れると疑いの程度を判定します

時効に注意 — 知ったときから早急に動く
時効 使い込みの返還請求には時効があります
不当利得返還請求(民法703条):使い込みを知った時から5年、または使い込み行為から10年のいずれか早い方で時効
不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条):損害および加害者を知った時から3年、または行為から20年のいずれか早い方で時効
実務上の注意:「被相続人が亡くなって通帳を確認したとき=知った時」として時効が進行し始めるケースが多いです。疑いを持ったら今すぐ弁護士に相談し時効の進行を止める(内容証明送付・訴訟提起)手続きを取ってください。

使い込みに対する法的手段

証拠収集の手順 — 弁護士と協力して進める
1
被相続人名義の全口座の取引履歴を取得する最優先
各金融機関に「取引履歴の開示請求」を行います。相続人であれば被相続人名義口座の取引履歴を取得する権利があります。過去10年分の取引履歴が取得できれば使い込みの全体像を把握できます。金融機関によっては弁護士照会の方がスムーズに開示されます。
2
ATM・窓口の取引記録で引き出した人物を特定する早急に
金融機関のATM利用記録・窓口取引記録には取引時刻・場所・操作者のカメラ記録が残っています。時間が経つと記録が消える(通常3〜5年で削除)ため、弁護士に依頼して早急に「弁護士照会(23条照会)」で取得してください。
3
医療・介護記録で「意思能力なし」の期間を特定する認知症の場合
被相続人が認知症・要介護状態だった期間の出金は「本人の意思によらない」と立証しやすくなります。かかりつけ医・病院・介護施設に診断書・介護記録・要介護認定書を請求します。弁護士を通じた照会書(23条照会)を使うと開示されやすくなります。
4
不動産・株式・保険の処分状況を確認する財産調査
不動産の登記履歴(法務局)・株式の移転記録(証券会社)・生命保険の受取人変更・解約記録なども確認します。遺産分割前の無断処分は不法行為になります。法務局のウェブサービスで不動産の登記情報を確認できます(有料)。
5
弁護士を通じて内容証明郵便・訴訟提起時効停止のため
証拠が集まったら弁護士を通じて「不当利得返還請求書(内容証明郵便)」を送付します。この時点で時効の進行が止まります(催告から6ヶ月以内に訴訟提起が必要)。相手が任意に返還しない場合は民事訴訟を提起します。

使い込み対応で気をつけること
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    「使い込みかもしれない」だけでは法的請求が難しい — 証拠が全て
    「あの人がやった気がする」という印象論では法的請求できません。通帳の取引履歴・ATM記録・医療記録という客観的証拠が立証の核心です。証拠を集める前に相手に「使い込みを知っている」と告げると証拠隠滅される危険があります。まず弁護士に相談してから動きましょう。
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    ATM・窓口記録は時間経過で消える — 今すぐ取得が必要
    金融機関のATM利用記録・防犯カメラ映像は通常3〜5年で削除されます。使い込みを疑った時点でできる限り早く弁護士に依頼して金融機関への照会を行ってください。時間が経つほど証拠が取れなくなります。
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    「贈与だった」という反論への備え
    使い込みを指摘すると相手が「被相続人から贈与を受けた」と反論することが多いです。贈与の立証責任は主張する相手側にありますが、「生前の贈与の合意があった形跡(メール・証人・贈与契約書)」がない場合は有利に反論できます。弁護士と想定問答を準備してください。
  • 使い込み額を遺産分割の中で調整する和解も有効
    訴訟で全額回収するより、遺産分割調停の中で「使い込んだ相続人の取り分を減らす」という形で和解する方が迅速・低コストで解決できることがあります。弁護士と「訴訟か調停内での解決か」の戦略を検討してください。

よくある疑問
弁護士照会(23条照会)とは何ですか?個人では金融機関に照会できませんか?
弁護士照会(弁護士法23条の2照会)は弁護士が依頼者の代理として公的機関・企業に情報開示を求める制度です。金融機関への取引履歴照会・ATM記録の取得・医療機関への診断書請求などに使われます。個人でも相続人として金融機関に取引履歴を請求できますが、弁護士照会の方が対応が速く・より広い範囲の情報が開示されることが多いです。ATMの防犯カメラ記録のような記録は弁護士照会でないと取得が困難です。
使い込みを行った相続人が遺産分割の話し合いに参加することは問題ありませんか?
法的には問題ありません(使い込みを行っても相続権は失われない)。ただし使い込みの証拠をもとに遺産分割調停で「使い込んだ金額を特別受益として計上」することで、その相続人の取り分を実質的に減らすことができます。また遺産分割とは別に不当利得返還請求訴訟を並行して進めることも可能です。相続欠格(廃除)は使い込みだけでは認められないため、注意が必要です。
被相続人が生前に「任せる」と言っていた場合、使い込みになりますか?
「口頭で任せると言われた」だけでは法的に有効な権限(代理権・贈与)の根拠になりません。委任契約書・代理権授与書面などがなければ「権限なく引き出した」として不当利得になります。ただし相手が「贈与を受けた」と主張した場合、その立証責任は相手側にあります。「任せると言っていた証拠(録音・メールなど)」がない限り、相手の主張は認められにくいです。
使い込みの金額が大きい場合、勝訴しても相手から回収できますか?
勝訴しても相手に支払い能力(資産・収入)がなければ回収が困難です。相手の預金・不動産・給与などへの強制執行が可能ですが、資産がない場合は絵に描いた餅になります。相手の資産状況を弁護士と事前に確認し、回収可能性を見極めてから訴訟費用をかけることが重要です。また訴訟に勝訴するだけでなく、相手の資産を「仮差押え」して確保しておく手続きも訴訟と並行して検討してください。
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